神経内科ニュース

2011年8月18日 早期のアルツハイマー病における脳の変化のパターンを解明した論文がNeurobiology of Agingのオンライン版に掲載されました。

 認知症の患者さんの半数以上はアルツハイマー病が原因です。アルツハイマー病では記憶の中枢といわれる“海馬”という脳の領域が萎縮することが知られており、それを画像でみることが診断に利用されています。しかし、実際には、アルツハイマー病の脳の変化には患者さんごとに違いがあり、それが診断上の問題になっています。
 そうした点を解明し診断の精度を向上させるため、教室の島啓介Dr、山田正仁教授を中心とする研究グループは,先端医学薬学研究センター 松成一朗部長らと共同で,早期のアルツハイマー病患者81名と,健常ボランティア267名について、脳の画像検査(MRI、PET)を行い、さらに脳脊髄液の異常などとの関係を調べました。その結果、早期のアルツハイマー病では、海馬領域に萎縮がみられるタイプ(68%)ばかりでなく、萎縮がないタイプ(20%)、“後部帯状回”という領域が萎縮するタイプ(12%)があることがわかりました。後部帯状回萎縮タイプは、若い患者が多く,その部位に高度の糖代謝低下があり、脳脊髄液中のタウ蛋白(脳障害の指標)が高いことを見出しました。この成果は、Neurobiology of Aging誌(IF=6.634)に掲載されました(平成23年8月18日、オンライン版)。
 この発見はアルツハイマー病の早期における脳の変化のパターンを解明した新しい成果であり,アルツハイマー病の早期診断に寄与するものとして注目されています。


Keisuke Shima, Ichiro Matsunari, Miharu Samuraki, Wei-Ping Chen, Daisuke Yanase, Moeko Noguchi-Shinohara, Nozomi Takeda, Kenjiro Ono, Mitsuhiro Yoshita, Yoshiharu Miyazaki, Hiroshi Matsuda, and Masahito Yamada. Posterior cingulate atrophy and metabolic decline in early stage Alzheimer’s disease. Neurobiology of Aging, 2011 Aug 18.


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