金沢大学脳神経内科

研究・業績

神経病理

研究紹介

当教室では神経病理グループの活動として、日常診療に直結した、末梢神経や筋生検の病理診断および、不幸にして亡くなられた患者さんの病理解剖と中枢神経病理の検討および最終的な病理診断を行っています。

神経病理診断は未解明な事項が多く残され、臨床診断が非常に困難である疾患が多い脳神経内科領域の診療において、最終診断を確認できる唯一の手段です。したがいまして、日常臨床における診療能力の向上のためにも、神経病理診断は最も重要であるとの考えに基づいて活動を続けています。

金沢大学における末梢神経および筋生検の歴史は古く、1982年1月に高守正治教授が着任される前より、内科教室の神経検査室にて末梢神経・筋生検が行われていました。台帳の記録からは、1981年度の筋生検の記録および生検検体が保存されています。生検検体は当科の症例のみではなく、当院の他科や他の病院からの検体も受け入れており、標本の作製と診断が行われてきました。2000年1月の山田正仁教授着任後も、年間約50検体程度の末梢神経・筋生検の診断を継続して行っています。
 2003年には病理関係担当の研究補助員が採用となり、それ以前はルーチンの染色に限られていましたが、他の特殊染色や免疫染色、末梢神経の場合はトルイジンブルー染色での検討やその後の電顕標本の作製、ときほぐし標本での検討が行える体制となり、現在まで続いています。

2007年からは当教室の関連病院で、当地域の神経難病患者さんを長期に渡り診療している主要施設である国立病院機構・医王病院に臨床研究部(院内標榜)が設置され、石田千穂部長を中心として、脳神経内科が剖検を行う体制が構築されました。一般臓器の病理診断は金沢医療センター川島篤弘先生にご協力を頂き、2008年11月から、医王病院にて臨床病理検討会が行われ、2019年4月で第58回を数えています。疾患の多くは神経変性疾患や筋疾患が占めていますが、金沢大学脳神経内科で入院精査が行われた症例の検討が行われることもあり、脳神経内科医の研修として非常に重要な機会となっています。なお、当教室はプリオン病の剖検、病理学的検索を行っており、数年に1例程度の病理解剖を行っています。

神経病理グループでの研究成果として、症例報告を主として継続した学会発表や論文報告を行っています。

・肉芽腫の形成を認めた封入体筋炎の症例の解析(Sakai K, et al. Neuromuscul Disord 2015)

・硬膜移植後Creutzfeldt-Jakob病におけるアミロイドβ蛋白の蓄積に関する検討(Hamaguchi T, et al. Acta Neuropathol 2016)

・肉芽腫の形成が認められたGNEミオパチーの報告(Nakamura K, Neuromuscul Disord 2017)

その他に、病理関係技術の研鑽のため、内科専攻医の先生方に生検係を担当してもらい、生検カンファレンスでの発表や病理診断報告書の作成を通して、生検技術や病理診断方法の指導、臨床診断能力の向上を図るとともに、一通りの末梢神経・筋生検が行えるように指導しています。 

鏡検で認められる様々な構造物

図1. Bunina小体(筋萎縮性側索硬化症の腰髄前角、HE染色) 図2. Lewy小体(パーキンソン病の動眼神経核、HE染色) 図3. 神経原線維変化(海馬傍回、Gallyas-Braak染色)
図4. 老人斑(後頭葉、βアミロイド免疫染色) 図5. 縁取り空胞(縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーの筋、Gomori trichrome変法染色)
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