金沢大学脳神経内科

年報

第15号(2015年3月)

教室年報・巻頭言

年報第15号の刊行にあたって

2014年(平成26年)の教室の記録を年報第15号としてまとめました。教室の診療、教育、研究活動に際し、学内、関連施設、国内外から多くのご支援、ご指導をいただきました。この場をお借りして心より感謝申し上げます。

 2014年、わが国では災害が相次ぎました。8月20日、広島市北部の土砂災害で74人が死亡しました。さらに、9月27日の木曽御嶽山の噴火では、山頂付近にいた登山者が巻き込まれ、死者57人、行方不明者6人を数えました。4月から消費税が5%から8%に上がり、年末には衆議院選挙が行われました。また、“STAP細胞”論文捏造が大きく報道されました。理化学研究所研究員・小保方晴子氏らが1月にネイチャーに発表した論文に不正が発覚し、12月、理研の調査委員会は“STAP細胞”とされた細胞は既存のES細胞であるとほぼ断定する報告書を公表しました。一方、青色発光ダイオードを開発した赤崎勇、天野浩、中村修二の3氏がノーベル物理学賞を受賞しました。
 海外では、エボラ出血熱の感染が西アフリカで拡大し、8月、WHOは緊急事態を宣言しました。韓国では、4月、旅客船セウォル号が沈没し高校生ら295人が死亡しました。ウクライナ南部クリミア半島においてウクライナから独立を宣言した「クリミア共和国」をロシアが国家として承認、欧米との対立が激化し、ウクライナ危機が深刻化しました。7月には紛争地域上空でマレーシア航空機が撃墜され298人が死亡しました。

 この年報にありますように、2014年、当教室ではさまざまな出来事がありました。その中の1つを取り上げますと、当教室が中心となって認知症のプロフェッショナル医を育成するプロジェクトをスタートさせました。以下に、それを紹介させていただきます。

 平成26年度から文部科学省の新規事業『課題解決型高度医療人材養成プログラム』が始まり、その中の『特に高度な知識・技能が必要とされる分野の医師養成:難治性疾患診断・治療領域』において、私達は北陸医科系4大学の拠点ネットワークを中核に関連医療機関等が連携して取り組むプログラム『北陸認知症プロフェッショナル医養成プラン』を開始しました。『認プロ』と呼びます。本プランの背景には、社会の高齢化に伴う認知症の人の急増があります。認知症診療のみならず、介護・福祉等、認知症に関わる全ての領域においてリーダーとして活躍できる人材の育成が急務です。認知症の専門医は非常に不足しています。最先端の知識・診療技能、地域において認知症の人や家族に対して幅広い支援ができる多職種連携力、未来の認知症医療・予防を創造する研究力を備えた、真のプロフェッショナル医師の育成が必要です。
 『認プロ』は北陸の医科系4大学(金沢大学、富山大学、福井大学、金沢医科大学)が拠点ネットワークを形成し、地域医療機関と連携し、研究機関、自治体等の協力を得て取り組みます。特色のある4コースを設置し、認知症プロフェッショナル医師を養成します(下図)。さらに、将来は、医師ばかりでなく認知症に関わる様々な職種(看護・介護関係、リハビリ関係、保健師、薬剤師、栄養士など)へ対象を拡大したいと考えております。
 がん医療に関わる優れた医療人育成を目標とする文部科学省のプログラム(『がんプロ』)が全国的に走っております。がんと並ぶ、屈指のcommon diseaseである認知症を対象に、当地域の神経内科、精神科、高齢医学科を中心に認知症診療に携わる施設等の方々の英知・総力を結集して、本事業が全国に先駆けて始まることは大変意義深く、今世紀半ばの超高齢化社会の認知症対策で活躍する専門医師育成のモデル事業となることが期待されます。皆様のご指導・ご支援をよろしくお願い申し上げます。

 この年報第15号を皆様方に御高覧いただき、今後も一層の御指導を賜わりますことができましたら誠に幸いに存じます。

2015年3月
山田正仁

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