第4号(2004年3月)
教室年報・巻頭言
年報第4号の刊行にあたって
昨年の教室の記録を年報としてまとめる時期になりました。2003年(平成15年)はイラク戦争、その後の占領状態と多発するテロ、自衛隊のイラク派遣決定など大きな出来事があり、歴史に記録される年になりました。大学および附属病院は、2003年4月の独立行政法人化、臨床研修必修化などの大きな機構改革を目前に控えた慌ただしい一年でありました。社会においても、大学においても、この年ほど、未来に向かって責任のある、きちんとした展望を持つ必要性が強く認識された年はなかったように思います。
本年報を見ながら2003年の私達の教室の診療、教育、研究の状況を振り返ってみますと、教室内に在籍する医師数はスタッフ5人に大学院生、ローテート中の研修医まで加え13名でしたが、大学、病院、研究室のパラメディカルや事務職員の方々はもとより、学内外の共同研究者の方々、学生の教育に助けてくださった関連病院の先生方、研究室に他から研究にきてくださっている大学院生など、多くの方々のご協力によって私達の活動は支えられていることが改めて実感され、この場をお借りして心より感謝申し上げます。
この2004年は、当科にとってまさに正念場であると私は考えております。
この4月から、当教室で活動する医師数は、スタッフ数はかわりませんが、多くの大学院生等が加わり合計20名に達します。それに加えて、研究費ベースの雇用で年間連日勤務していただく研究職、技師、秘書の方々が7名、さらにパートで勤務してくださる臨床心理士さんが数名いらっしゃり、臨床に、教育に、研究に、かつてないパワーを発揮できる体制が整いつつあります。4年前に私が着任した時は、私を含めて教室にいる者は全部で10名であったと記憶しておりますが、もう“マンパワー不足でーーー”という言い訳はできなくなってきていると思います。
昨年までの研究面についての取り組みについてみると、未だ十分成果が上がっているとは言い難い状況にあります。
2004年は、充実した診療と臨床研究を基盤に、研究面でオリジナリティーの高い研究を長期に渡って成し遂げていくためのベースをしっかりと築く年にしたいと考えております。来年の年報では、是非、各プロジェクトごとの成果や展望を述べるセクションを設けることができるようになればと思います。
先日、内閣府の食品安全委員会による変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)/BSE関連の調査で、英国のエジンバラとロンドンに出張し、変異型CJDに罹患している若い英国人女性を診察する機会がありました。こうした大きな社会問題となっているような比較的稀な感染性疾患から、高齢化に伴って多発している痴呆や脳血管障害、さまざまな神経難病に至るまで、私達神経内科医に対する社会的ニーズはいよいよ大きくなってきております。社会に貢献できる神経内科をめざして、今後も日々努力を重ねていきたいと存じます。
この年報第4号を皆様方に御高覧いただき、一層の御指導を賜わりますことができましたら誠に幸いに存じます。
平成16年3月
山田正仁