Alzheimer病のリスク遺伝子・CD33の欠失による免疫細胞の機能変化に関する研究の成果がGlia誌に掲載されました。
CD33はマクロファージやミクログリアなどの免疫細胞に発現する抑制性受容体で、近年のゲノムワイド関連解析によりその遺伝子多型はアルツハイマー病の発症と関連することが明らかとなりました。一方でCD33の免疫細胞における詳細な機能はよくわかっていません。そこで我々はCD33をゲノム編集にてノックアウトさせたTHP1マクロファージ、ヒトiPS由来ミクログリアを用いて、CD33下流の細胞内シグナル伝達経路の活性化、サイトカインの遺伝子転写、貪食能、貪食関連酸化バーストを評価しました。 マクロファージの全ゲノムトランスクリプトーム解析ではCD33ノックアウトは、CD33シグナル伝達関連チロシンフォスファターゼ、PTPN6をノックダウンした場合と同様に炎症関連経路の常時活性化を引き起こすことが分かりました。さらにCD33ノックアウトは、SYKやERK1/2など細胞活性化に関与するキナーゼのリン酸化を亢進し、サイトカインの転写を増加させました。機能解析では、凝集アミロイドβ42や細菌微粒子の貪食がCD33ノックアウトによって増加し、貪食関連酸化バーストによる活性化酸素種の産生も亢進しました。この成果はGlia誌のオンライン版に掲載されました。 これらのことから、ヒトのマクロファージやミクログリアにおけるCD33の欠失はアミロイドβ42などの貪食亢進という有益な面がある一方で、酸化バーストや炎症惹起など不利益な可能性もあることがわかりました。
Wißfeld J*, Nozaki I*, Mathews M, Raschka T, Ebeling C, Hornung V, Brüstle O, Neumann H.
*These authors are equally contributed.
Glia 2021 Feb 4. doi: 10.1002/glia.23968