アルツハイマー病による軽度認知症を対象とするロスマリン酸含有レモンバーム抽出物を用いたプラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験の結果がScientific Reports誌に掲載されました。
これまでに我々は植物性ポリフェノールの一種であるロスマリン酸について、試験管内及び動物モデルで抗アルツハイマー病効果を報告してきました(Ono K, et al. J Neurosci Res 2004; Hamaguchi T, et al. Am J Pathol 2009)。また、レモンバームからロスマリン酸を抽出したカプセルを作成し、健常人でロスマリン酸を500mg/日投与する際の安全性と薬物動態を検討しました(Noguchi-Shinohara M, et al. PLoS One 2015)。今回、我々は軽度アルツハイマー型認知症の患者さん23名の協力を得て、24週のプラセボ対照ランダム化比較試験を実施しました。実薬群、プラセボ群ともに診察所見や有害事象の出現に差はみられず、主要評価項目のロスマリン酸500mg/日の24週連続投与の安全性・忍容性は問題ないことが示されました。副次評価項目として臨床効果を検討したところ、認知症の行動・心理症状の指標であるNeuropsychiatric Inventory Questionnaire (NPI-Q)スコアが実薬群では0.5ポイント改善していたのに対して、プラセボ群では0.7ポイント悪化していました。
本研究成果によりレモンバーム抽出ロスマリン酸500mg/日の長期投与は、安全で忍容性が高いこと、及びアルツハイマー病による行動・心理症状の悪化を予防する可能性が示唆されました。
Noguchi-Shinohara M, Ono K, Hamaguchi T, Nagai T, Kobayashi S, Komatsu J, Samuraki-Yokohama M, Iwasa K, Yokoyama K, Nakamura H, Yamada M.
Scientific Reports volume 10, Article number: 18627 (2020)