孤発性あるいは分類不能のCreutzfeldt-Jakob病(CJD)と診断されていた症例の中に医原性のものが含まれていることを明らかにし、その結果がEmerging Infectious Diseases誌に掲載されました。
ヒトのプリオン病は、その原因から原因不明の孤発性、プリオン蛋白(prion protein: PrP)遺伝子変異を伴う遺伝性、医療行為や食品から感染した獲得性の3種類に分けられます。わが国のプリオン病は、孤発性Creutzfeldt-Jakob病(CJD)が最も多く、全プリオン病症例の約3/4を占めます。また、わが国では硬膜移植によってヒトからヒトへ医原性に伝播した硬膜移植後CJDが多発していることが大きな問題となっており、全世界の硬膜移植後CJDの6割以上がわが国で発症しています。さらに、最近わが国の硬膜移植後CJDの検討によって、新たな獲得性プリオン病の病型としてMMiK型CJDが見出されました。
今回我々は、わが国では1999年4月より継続されているわが国の全プリオン病症例を登録する研究(CJDサーベイランス委員会)に登録されている症例を検討し、孤発性あるいは分類不能のCJDと診断されていた症例でCJD発症前に脳外科手術を有する症例の中に、MMiK型CJDの症例やその特徴を持つ症例が含まれることを明らかにしました。また、頭部MRI拡散強調画像にて両側視床に高信号病変を認めることがMMiK型CJDの特徴で、その臨床診断のマーカーとなる可能性があることを報告しました。
本研究成果は、MMiK型CJDの病型を呈するプリオン病をより正確に診断することによって医原性プリオン病の発症のより正確な把握が可能となることにつながると期待できます。
Hamaguchi T, Sakai K, Kobayashi A, Kitamoto T, Ae R, Nakamura Y, Sanjo N, Arai K, Koide M, Katada F, Harada M, Murai H, Murayama S, Tsukamoto T, Mizusawa H, Yamada M.
Emerg Infect Dis 2020; 26: 1140-1146.