アミロイドβ蛋白(Aβ)の脳への沈着はアルツハイマー病の中心的な特徴です。私達はフェノール化合物を多く含む食品がアルツハイマー病のリスクを下げるという疫学的研究報告に注目し、フェノール化合物を用いたアルツハイマー病の予防・治療法の研究開発を行っています。
当教室の小野賢二郎Drらは、米国Case Western Reserve大学、UCLA、富山大学、理化学研究所との共同研究で、フェノール化合物(ミリセチン、ロスマリン酸など)がAβのオリゴマー化を抑制し、Aβオリゴマーの細胞毒性やシナプス毒性を軽減することを示し、さらにNMR解析でミリセチンのAβモノマーへの結合部位を解明し、その成果がJournal of Biological Chemistry誌(IF = 5.328)のオンライン版に掲載されました。
この研究は、当教室が従来から独自に取り組んできた食品関連天然フェノール化合物の抗アルツハイマー病効果の分子メカニズムを明らかにしたものです。当教室の浜口 毅Drらは、アルツハイマー病動物モデルにおけるフェノール化合物の効果を既に報告しています(Hamaguchi et al. Am J Pathol 175:2557-65, 2009)。現在、当教室では、フェノール化合物によるアルツハイマー病の臨床試験を進めています。Ono K, Li L, Takamura Y, Yoshiike Y, Zhu L, Han F, Mao X, Ikeda T, Takasaki J-I, Nishijo H, Takashima A, Teplow DB, Zagorski MG, Yamada M. Phenolic compounds prevent amyloid beta-protein oligomerization and synaptic dysfunction by site specific binding. J Biol Chem, 5 March 2012 (on line)
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