金沢大学脳神経内科

研究・業績

プリオン病に関する研究

研究紹介

我々の教室は、当科教授の山田が我が国のクロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease:CJD)サーベイランス委員会の委員長を2010年度まで務め、2011年度から現在まで「プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班」の研究代表者を、2015-2018年度には「プリオン病及び遅発性ウイルス感染症の分子病態解明・治療法開発に関する研究班」の研究代表者を務めるなど、我が国のプリオン病研究の中心的な役割を果たしています。

孤発性CJDはプリオン蛋白遺伝子のコドン129多型(MまたはV)と、剖検脳ホモジネートのプロテアーゼ抵抗性プリオン蛋白の電気泳動の結果(1型、2型)により、これらの組み合わせで6種の亜型(MM1、MM2、MV1、MV2、VV1、VV2;MM2はさらに皮質型と視床型に分けられる)に分類されます。プリオン病は神経変性疾患であると同時に感染症でもあるため、我が国では剖検して確定診断を行う症例が少ないことが大きな問題ですが、我々の教室では当科で亡くなられたプリオン病症例の剖検を積極的に行っています。その成果として、MM型孤発性CJDでありながら病理学的にプラークを持ち、のちの検討でMMiK型CJD(「i」はプロテアーゼ抵抗性プリオン蛋白の電気泳動で1型と2型の中間の移動距離を示す「intermediate type」の略、「K」はKuru斑)という新たな獲得性プリオン病であることが判明した症例(Neurology 2003, J Virol 2015)や視覚症状で発症し、病初期から後頭葉にMRI異常信号病変を認めたMM2皮質型孤発性CJD症例(Neurology 2006)を報告しました。また、CJDサーベイランス委員会で診断したわが国初の変異型CJDの報告も行いました(Lancet 2006)。それ以外にも漢字の書字障害にて発症した症例(J Med Case Rep 2014)や世界初のV203I変異ホモ接合体の家族性CJD症例(Prion 2014)を報告してきました。

臨床診断の向上を目指し、末梢神経への異常プリオン蛋白の沈着(J Neurol Neurosurg Psychiatry 2005)、非典型的な経過を呈し初期診断が困難なMM2型孤発性CJDの臨床診断法(Neurology 2005)(図1, 2)、CJD症例における病初期からの血清タウ蛋白濃度の上昇(J Neurol 2011)などを報告してきました。CJDの病態解明として、本邦の遺伝性プリオン病で最も多いV180I変異例において進展過程における空胞形成と神経変性の進行との関係(Prion 2017)を報告しました。

さらに、本邦のCJDの大きな問題である硬膜移植をはじめとする医療行為に伴うプリオン病に関する研究にも力を入れており、硬膜移植後CJDの臨床的特徴および診断(Neurology 2007)、眼科手術に伴うCJD発症の危険性(Emerg Infect Dis 2007)、医療行為に伴うCJD発症の危険性(Emerg Infect Dis 2009)、西欧諸国と比較して本邦で硬膜移植後CJDが多い原因(J Neurol Neurosurg Psychiatry 2013)を報告するなど、臨床的にだけでなく公衆衛生的にも重要な報告を行ってきています。 特に2010年に10年間のサーベイランスの結果をまとめ日本のプリオン病の西欧諸国とは異なる実態を明らかにし(Brain 2010)、国際的にも高い評価を得ました。

今日に至るまで様々な成果を上げてきていますが、プリオン病は未だ治療法がなく致死的な疾患であり、治療に関連する研究にも積極的に参加していきたいと考えています。アルツハイマー病、パーキンソン病といったプリオン病以外の数多くの神経変性疾患もプリオン病と同様に異常蛋白沈着を主病変とし、これらの疾患も異常プリオン蛋白の伝播と同じ様なメカニズムで個体から個体へ伝播する可能性が報告されています。プリオン病研究は今後ますます幅が広がりつつあり、我々は今までのプリオン病研究で得た経験をこれらの疾患へ応用することを視野に入れながら、今後も研究を進めて行く予定です。

図1.MM2型孤発性CJDの頭部MRI拡散強調画像

  • ・A:MM2皮質型、B: MM2視床型。MM2皮質型では、両側前頭葉、頭頂葉、後頭葉に拡散強調像で強い高信号を認め(A)、MM2視床型では、明らかな異常信号病変を認めない(B)。

図2.MM2型孤発性CJDの脳血流SPECT

  • ・A: MM2皮質型、B: MM2視床型。MM2皮質型では、両側側頭葉皮質の血流低下を認め(A: 赤矢印)、MM2視床型では両側視床の血流低下を認める(B: 赤矢印)。
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