教室案内

第5号(2005年3月)

年報第5号の刊行にあたって



 2004年(平成16年)の教室の記録を年報第5号としてまとめました。

 2004年は天変地異が相次ぎ、また戦争やテロなどの事件の絶えない年でした。日本列島を串刺しにするようなコースで台風が次々と来襲し、10月には新潟中越地震、年末には未曽有の津波被害を生じたスマトラ沖地震が起こり、さらにテロや戦闘状態が続くイラクと自衛隊のイラクへの派遣、北朝鮮による日本人拉致問題、繰り返される子どもの虐待や誘拐殺人など、数えきれないニュースが一年中、日本や世界を駆け巡りました。天災、人災入り混じり、まさしく『災』の一字で象徴される年でした。

 大学および附属病院は、独立行政法人化、臨床研修必修化などの大きな機構改革を経験しました。独立行政法人化では、新しい制度への対応に慌ただしく追われ、診療や研究において、採算性、研究費や特許の獲得などの努力が格段と求められるようになりました。こうした差し迫った応急処置的対応の一方で、長期的な展望をもって独自の特色を育て、それを外に向かってアピールしていくことが組織の存続上不可欠であることがいよいよ明確になりました。新たな研修制度では、大都会の研修病院の人気が高まる一方で、大学病院、特に地方の大学病院には研修医が集まらないことが明らかとなり、今後、地域の医師供給における大学の役割の問題、研修修了後の医師の動向予測などがクローズアップされてきました。

 本年報をみながら、2004年の私達の教室の診療、教育、研究の状況を振り返ってみますと、4月から、多くの若い医師が大学院生として教室に戻ってきたことに加え、臨床心理士、検査技師、事務職員の方々の数も増え、教室内に多くの人数が在籍するようになりました。さらに、教室の活動は、学内や院内の方々はもとより、学外の共同研究者の方々、診療や学生教育を助けてくださった関連病院の先生方、当科研究室に他から研究にきてくださっている大学院生など、多くの方々のご協力によって支えられており、この場をお借りして心より感謝申し上げます。

 以前と較べ教室内に多くの人員を擁するようになった昨年は、診療・教育面が一段と充実しました。たとえば、当科の病棟では、各教官をチーフに、医員、大学院生、研修医、ベッドサイド(クリニカル・クラークシップ)の学生からなる主治医グループを単位として診療しており、朝8時の各主治医グループによるモーニング・ラウンドから毎日が始まります。その中で、多数の若手が活躍することにより、きめ細かく活気のある診療や学生教育を行うことができるようになったと思います。

 研究面では、脳老化・痴呆・アミロイド、神経免疫、脳血管障害等の研究を行いました。昨年は、幸いにも、研究プロジェクトが、文部科学省の知的クラスター創成事業(痴呆早期診断システム/平成16―20年)や21世紀COEプログラム(革新脳科学/平成16―20年)に採択されるなど、よいニュースがありました。研究の大きな発展に向けて、力強い後押しをいただき感謝しております。

 業績をみますと、残念ながら、現在は未だ、インパクトの高い独自の研究成果が続々と出ているといえる状況ではありません。しかし、最近、教室員による臨床論文(主に症例報告)の投稿が増えてきたことが、徐々に業績に反映されてきているように思われます。たとえば、神経内科領域の代表的な雑誌であるNeurology誌をみますと、昨年は、教室員が筆頭著者の論文が5つ掲載あるいは印刷中となっていますが、そのうち4つは、私達の病棟に入院されていた患者さんの症例報告関係であり、残りの1つも、私達の入院患者さんを含む全国多施設共同臨床研究の報告です。私達が診させていただいた患者さんについての新しい発見や診断・治療上の工夫が、担当医によって国際誌にきちんと報告されていることは、病棟や外来で充実した診療が行われていることを示す一つの証左であり、また、教室員が将来、オリジナリティーの高い研究を成し遂げていくための大切な基盤となるものと思います。今後も、臨床報告を一層重視し、さらに充実させていきたいと存じます。

 私達は神経疾患の予防や治療を通じて、患者さんの幸福の一助となり社会に貢献できる神経内科をめざし、教室員一同努力を重ねていきたいと思います。この年報第5号を皆様方に御高覧いただき、一層の御指導を賜わりますことができましたら誠に幸いに存じます。

平成17年3月
山田正仁
 
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