教室案内

第3号(2003年3月)

年報第3号の刊行にあたって



 昨年の教室の記録を年報としてまとめる時期になりました。2002年(平成14年)は北朝鮮拉致問題、緊張が高まるイラク情勢、小柴さん、田中さんのノーベル賞ダブル受賞などさまざまなことがありました。この一年間の私達の教室の活動を年報第3号として報告させていただくと共に、診療、教育、研究などの様々な面で、御指導、御鞭燵をいただきました学内・外の皆様方に心より感謝申し上げます。

 高守正治名誉教授の御赴任により1982年にスタートした金沢大学神経内科は2002年に創立20周年を迎えました。神経内科の医局・研究室は創設以来、1日6病棟と呼ばれる"歴史的な1'建造物(昭和13年建築)にありました。この建物は建築当時、金沢の小立野台地では初めての近代的な高層建築物であったそうです。2001年の新病棟完成'移転に引き続き、2002年から新中央診療棟の建築が始まりましたので、それに伴い1日6病棟は取り壊されることになり、2002年9月に神経内科は旧1病棟(新第2研究棟)に移転しました。更に、3-4年先には、新外来棟建築に伴い現在の建物も取り壊されるので、また移転と引っ越しが続く模様です。

 大学、医学系研究科、医学部附属病院は、他大学と同様に、H16年度からの独立行政法人化、卒後臨床研修必修化、COE構想など多くの課題をかかえ、ベストの選択をめざし懸命に努力しております。その中で昨年11月、非常に悲しい出来事がありました。それは御多忙の極みにあった病院長の小林健一教授(旧第!内科)が急逝されたことで、その衝撃はあまりに大きいものでありました。

 私は2000年に金沢大学神経内科に赴任いたしましたが、おかげさまで3年間を無事過ごさせていただきました。着任後すぐに、教室員がお世話になっております関連病院(北陸3県、新潟および関東地域)をすべて訪問し、つぶさに見学させていただきました。また、教室同門や学内ばかりでなく、北陸地域で先端的研究を行う様々な領域の研究グループ(福井医大、北陸先端科学技術大学院大、金沢工大、先端医学薬学研究センター)の先生方と共同で仕事を始め、更に、地域の脳健診構想や産学官共同研究事業の立ち上げに伴い行政や産業技術関連の方々とも関わりができました。新しい任地で、すぐにこうした様々な機会に恵まれ、日々充実して過ごさせていただけましたことを心より感謝し、この場をお借りしまして厚く御礼申し上げます。

 金沢大学に着任いたしまして、まず感じましたことは、当地域は他地域(特に大都市圏)と比較して神経内科医の数が少なく、神経内科医が診るべき患者さんを神経内科医が診ることができていない、また、神経内科医の果たすべき役割が一般にはもちろん、医療関係者の間でも十分に理解されていないという現状でした。たとえば、高齢化の先進地域である北陸では、脳血管障害、痴呆、そしてパーキンソン病を始めとする神経難病に悩んでいる多くの患者さんがいらっしゃり、そうしたcommondiseaseを含む神経疾患の診療を高いレベルで実現することが我々の使命と考えております。脳老化・痴呆関連疾患につきましては、診断・治療法の開発研究プロジェクトの開始と同時に、大学病院に『もの忘れ外来』を開設しました所、数力月先まで初診の予約が満杯という状態が続き、二一ズの高さを改めて実感いたしました。脳血管障害につきましては、他地域の先進的な脳卒中専門施設に教室員を派遣し、将来のstrokecare構想を準備しつつあります。内科の上に神経内科を学び、その上に更に数年以上脳卒中を専門研修した専門家による世界水準の脳卒中診療の実現をめざしています。神経難病に関しては、地域の患者さんのケアをサポートする体制(神経難病ネットワーク等)の構築が遅れており、診療・研究体制の整備と共に、早急に対処すべき課題になっております。赴任して大学病院や関連病院で患者さんを診せていただきまして大変驚きましたことは、当地域には非常に稀な疾患の患者さんが多数いらっしゃるということでした。教室員が研修中に自分が診させていただいた患者さんの貴重な経験をきちんと症例報告することを非常に重視しています。当教室では、大学および関連病院での内科一般の研修および神経内科の初期研修の後、大学院に入る場合が一般的ですが、研修中の重要な経験をきちんとレポートとしてまとめ、世界に向けて発信する力を養うことが第一のステップであり、そうしたベッドサイドの原点を大切にして、次のステップの研究に入っていくようにしています。最近、教室員が臨床報告を積極的に投稿するようになったことを嬉しく思っておりますが、教室の年報をみましても、興味ある学会発表が非常に多数あるにもかかわらず、原著論文として報告されているものはまだまだ僅かにすぎません。地域における診療一ケア体制、研究体制等のシステムの整備・充実と同時に、私達の患者さん一人一人をしっかりと継続して診て行く姿勢(執念!)を養って行きたいと考えております。

 この年報では、大学の神経内科の診療、教育、研究の実績と共に、関連病院における活動実績につきましても寄稿をいただいております。今後、一段とパワーアップし、更なる発展をめざし教室員一同努力を重ねていきたいと思います。この年報第3号を皆様方に御高覧いただき、一層の御指導を賜わりますことができますれば誠に幸いに存じます。

平成15年3月
山田正仁
 
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